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フランス国営放送における創価学会批判番組 その実態と疑惑に迫る

1.『ル・モンド』紙に見る番組の評価

 該当の創価学会攻撃を意図する番組は、『ル・モンド』紙で、いかに評価されていたのか。上記「はじめに」の項目で示した通り、番組が放映される3日前の2000年6月5日、『ル・モンド』紙は、アンリ・ティンク(Henri Tincq)という人物の手になる同番組の批評を掲載しました。ティンク氏は、フランスにおけるセクト(この場合、カルトの意味)の専門家として、広く名を馳せている人物です。インターネットの検索エンジンにティンク氏の氏名「Henri Tincq」と「secte / sectes(セクト:/ は "or" を示す)」を入力すると、氏による数多くの宗教批評およびその論評が検出されます。このティンク氏の批評の在り方には様々な評価が見られます。しかし、フランスに関わるセクト問題を論じる際には、無視できない重鎮の一人であることに違いはありません。なお、念のために、ティンク氏は基本的に創価学会の擁護派ではなく、上記の検出されたウエブページを一瞥すると、むしろ、彼には創価学会に対する誤解があることを申し添えておきます。

 さて、ティンク氏による批評からは、先ず、同番組の題名が読み取れます。それは、「妖怪―創価学会(Le "spectre" Soka-Gakkai)」。決め付けが先行し、中立性が微塵も窺えない題名となっています。次に、内容について、ティンク氏は、先ず、次のように評価を下しています――「これは、『罠』にかかると同時に、雑然さを免れていない番組である」。ここで、「罠」とは、特定の宗教団体の諸活動を悉くセクト特有の徴候と見なす傾向を指します。簡潔に言えば、先入観と偏見に溢(あふ)れた状態です。「雑然さ」とは、文字通り、構成が纏(まと)まっていない状態。いわば、ティンク氏によれば、同番組は、「偏見に満ちた、構成の杜撰なもの」となります。この批評に続いて、ティンク氏は、以下のような辛辣な評言を述べています。

・「日本の社会背景をほとんど無視して番組を制作している」―同番組が日本の社会状況を無視して日本の創価学会を論じていることが窺えます。
・「フランスの一般家庭における祈りが、一体、そのまま精神操作といことになるのか」―SGIフランスのメンバーが家庭で祈りという行為を行なっている姿を、番組は無媒介にセクトの行為と見なしていることを示しています。
・「書籍などを販売したり講習会を開くことが、そのまま搾取になるのか」―同番組が、創価学会の出版活動と諸会合を、無媒介に、セクトの行動と見なしていることを示しています。
・「長年に渡って創価学会を見てきた専門家の見解が、ほとんど取り入れられていない」―同番組が客観性・学術性において極めて貧弱であり、通俗番組の域を出ていないことを示しています。

 以上のような辛辣な評言を重ねた後、ティンク氏は、次のように結論しています。いわく、「セクト問題は重要であり、慎重に捉えられねばならない」、「それは、扇情的な世論操作を意図する人物やテレビから放たれる感情のみに委ねられるべきではない」。すなわち、ティンク氏によれば、同番組は、「人々を扇動する意図に貫かれた、社会に害悪を及ぼす低俗番組」という結果になります。

 概要、以上がティンク氏の批評です。『ル・モンド』紙は、同番組の質を示すものとして、この批評を掲載したのでした。この批評を読む時、同番組について、「フランス国営放送」であることを金科玉条とすることが、いかに愚劣であるかが明らかになります。そして、この番組を日本で最初に紹介した『週刊ポスト』の中吊り広告の見出しには、こう示されていたのでした―「仏国営放送 [60分] 特番の問題シーン」、「折りも折り! 与党公明党は黙っているのか!?」と。センセーショナルである分、『ル・モンド』紙の批評を知った後には、実は、その見出しが、他ならぬ『週刊ポスト』自らの蒙昧を露呈している見出しであったことが明らかになります。


*なお、ここで論じた『ル・モンド』紙の批評について、当時、該当紙のオフィシャルサイトで無条件で見ることができたものから、主要部分を写真版にして、こちらに採録しています(click)。解像度は70%であり、なるべく多くを採録する目的から、全体をやや縮小しています(赤い文字は検索に際して使用したキーワードの痕跡:"Le 'spectre' Soka-Gakkai"=「“妖怪”創価学会」は該当するテレビ番組のタイトル)。

 全体をご覧になりたい場合、現在、『ル・モンド』紙が、同紙の講読契約と引き換えで、それを提供しています。入手を希望される方は、同紙のオフィシャルサイトにおける、こちらのページを開き、画面の指示に従うと良いでしょう。因みに、このページには、該当記事の一部(番組に対する疑念の表明を含む)が抜粋・掲載されています。もっとも、このURLは移動する可能性があり、ここで該当ページに導かれない場合は、同紙オフィシャルサイトのホームを開き、「Rechercher(検索)」と記載されたサイト内検索の欄に「spectre soka-gakkai」(無論、日本語の記号である鍵括弧は外す)を入力し、「depuis(以来)」から「-1987」を選んで、検索をかけてください。

 ただし、これによって、万一、クレジットカード等に関わる事故が生じた場合、私は、一切の責任を持ちません。私としては、むしろ、ティンク氏自身によって『ル・モンド』紙における該当の批評の内容が敷衍された、こちらのサイトを推薦します。